CASE01 オリックス・ホテルマネジメント株式会社

 中小企業の組織・人事領域の課題では、人材の確保が特に多く挙げられています。企業の課題に「地域の人事部」がどのように応えているのか、実際に人材の確保のため「地域の人事部」を利用している企業へのインタビューでご紹介します。

 神奈川県箱根町を中心に「地域の人事部」として活動している「一般社団法人箱根町観光協会(以下、箱根DMO)」では、宿泊業をはじめ地域の観光業における人事機能を支援するため、副業・兼業人材のマッチングサービス「サンカク」の提供や、人材の確保・定着・育成に向けた研修等の開催を行っています。とりわけ、参加した箱根町内の観光業各社では、副業兼業人材の導入が進んでいない状況にありましたが、箱根DMOの取組によりこうした取組を学び、導入に挑戦しています。

 サービスを2025年度に利用した、オリックス・ホテルマネジメント株式会社が運営する旅館「箱根・強羅 佳ら久」の見學慶佑さんにお話を伺いました。

オリックス・ホテルマネジメント株式会社
https://www.orix-realestate.co.jp/hotelmanagement/

箱根・強羅 佳ら久
https://gora-karaku.orixhotelsandresorts.com/

所在地:東京都港区
創業年:1997年
従業員数:1,092名
事業内容:旅館・ホテル・研修施設等の施設運営

「地域の人事部」のサービス等を利用するまで

――人材の確保・育成・定着について、どんな課題や取組の必要性を感じていましたか。

 自施設の状況を振り返る中で、より働きやすい環境づくりを進めていくためには、会社全体だけでなく、箱根エリア特有の人材の動きや傾向に目を向け、他社とも意見交換をしながら考えていくことが重要だと感じるようになりました。

 弊社が箱根エリアで運営している「箱根・強羅 佳ら久」(以下、佳ら久)と「箱根・芦ノ湖 はなをり」(以下、はなをり)は、どちらも従業員の定着率を上げることが課題でした。

 特に若手社員については、キャリアの選択肢が多様化する中で、さまざまな理由から次のステップへ進むケースも見受けられました。私自身、同期や後輩の進路の変化を身近に感じる経験を通じて、従業員一人ひとりが楽しく働き続けられる職場とは何かを改めて考えるようになりました。

 また当時の社内研修は、入社3年目までの若手社員を対象に、年に1回程度の集合研修を中心として実施していましたが、各エリアや施設の実情とはやや距離のある内容も含まれていました。

 そのため、若手社員それぞれが日々感じている悩みや想いに、より寄り添えるような学びの機会を工夫していく余地があるのではないかと考えるようになりました。

――「地域の人事部」のことを知り、利用するに至った経緯を教えてください。

 人材の定着に課題を感じているなかで、新しい上司が以前から箱根DMOの取組を知っていて教えてもらいました。連絡したところ、ちょうど年度内の活動のキックオフイベントの直前で、すぐに参加を希望しました。

オリックス・ホテルマネジメント株式会社の社員、見學慶佑さん

「地域の人事部」のサービス等を利用して

――「地域の人事部」を通じて、どんなことに取組みましたか。

 現在、副業兼業人材とのマッチングサービスを利用する段取りを進めていて、食品衛生や施設管理、売店整備などのプロフェッショナル人材を、副業兼業で活用することを目標にしています。これまでは、施設内の食品衛生や設備管理の人材が不足していることが現場の課題感としてあり、専門の人材を雇って任せられないかと考えていました。HACCP(ハサップ)などの知見をお持ちであれば、若手への指導・教育もお願いできないかという期待もあります。そうした中で、箱根DMOからマッチングサービスを紹介してもらいました。これまで副業兼業で人材を活用した経験がなく、社内でその必要性を説明していくことから始めました。こうした数か月間の準備期間を経て、まもなく運用を始めるという段階にあります。

 人材の確保では、派遣社員には寮の準備などの対応が必要であり、一方でパート・アルバイトは派遣社員に比べると時給が下がるので集まりづらいのが実情です。今までとは違うアプローチをしないと解決できなさそうだという思いがあるので、副業兼業人材には期待しています。副業兼業ではリモートワークの需要が多いこともあり、箱根DMOによる勉強会で得たアドバイスも活用しながら、求人の書き方や募集条件を工夫して当社に応募しやすくするなどの取組を都度考えていきたいと思っています。

 また、はなをりの人事担当者も含めて、箱根DMOが開催する新人研修や求人のブラッシュアップ勉強会にも参加しています。研修を通じて参加している地域内の各企業の新人同士が、会社の枠を超えてつながりを持てています。自社のグループ内での施設やエリアを超えた交流は弊社でも行っていますが、企業横断的な取組は自社では実現できないものです。参加している従業員は、他社の従業員が日々感じていることを共有して、他社でも同じような悩みがあることを知ることができます。研修では能力を身につけることよりも、他人と共感し合えたり、一人じゃないという感覚を持ってもらったりすることが大事だと思っていますので、私たちもどんどん参加させたいと思っています。求人のブラッシュアップ勉強会では、求職者がどういう情報を重視しているのか等の情報を得ることができ、パート・アルバイトや障害者、派遣社員の募集に学んだことを活かしています。

――取組を通じて、どんな点にメリットを感じていますか。

 箱根DMOによる勉強会に参加している企業の担当者とつながりができるほか、各企業の取組を共有する報告会では人材の活用で共通する課題について話し合う機会が得られています。私は新卒入社5年目で、管理職手前の中堅層ですが、どの企業でもこうした年代・層の従業員を確保・育成することを課題に感じているようです。企業の枠を超えて共通課題を話し合う中で、若手がなかなか裁量を持てなかったり、自分のアイディアを表現しづらかったりする環境が早期離職の一因ではないかと感じました。そして、同期や若手とともに達成感を味わってもらえる機会を作ることで、働くことにより前向きになってくるのではないかという発見がありました。この発見が当社で新入社員向けにプロジェクト型の研修の実施につながりました。こうした取組の成果もあり、実際に足下の離職者数は前年度比で半減するに至りました。

 この他にも、新人に限らず社内のエリア単位の研修などの充実に取組んでいます。どちらも普段の職場環境を超えて、同じような課題や悩みを持っている他社や他施設の担当者と話すことが従業員の刺激になって、定着の促進にも活きていると感じています。

箱根DMOによる勉強会に参加した企業の人事担当者ら

「地域の人事部」に対する今後のご期待

――今後利用したい「地域の人事部」のサービスや、期待していることを教えてください。

 箱根DMOが開催した勉強会に参加する中で、他社の担当者からも「採用よりも定着の課題感が強い」といった話をよく聞きました。若手に将来的に管理職となって定着してもらうためには、管理職になりたいと感じてもらえることが必要であり、これは地域全体での人材定着に向けた課題ではないかと感じています。

 そのために、自社としてはまずは若手にもっと管理職に興味を持ってもらうために、今後は自社の管理職手前の中堅・若手に対して箱根DMOが開催する管理職手前研修に参加させていきたいと考えています。研修を通じて、中堅・若手に、自分の仕事の面白さを再認識してもらえたら、自然と管理職を目指す意欲につながることを期待しています。

 加えて、今後、若手が企業を横断して中長期的にプロジェクトに取り組める場があるとよいと感じています。企業を超えた横との繋がりを持つとともに、各企業を代表して参加するという自覚を持つことで、責任感や主体性も育めると考えています。こうしたプロジェクトに一生懸命に取り組むうちに、気が付いたら充実した日々を過ごしていたということもあるかと思うので、若手にはそんなチャンスを提供できたらと思っています。